内村航平選手の2020全日本シニア選手権から2021全日本種目別選手権までの鉄棒の演技を振り返りるという記事です。
私が個人的に内村航平選手が五輪代表を掴むに至る分岐点となったと思っている演技について加筆したので更新しました。

2019年には夢物語と語った東京五輪。
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しかし鉄棒に専念するという道を佐藤寛朗コーチとともに選択し、東京五輪への可能性を作りました。
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そして再び「自分史上最高に輝ける舞台」へ上がる切符を手に入れた内村航平選手の軌跡を振り返ります。
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■2020全日本シニア選手権

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:7.600
得点:14.200
「ブレットシュナイダー」を取り入れると明言してから初の試合となる全日本シニア選手権です。
「ブレットシュナイダー」はバーに近づいて確実にキャッチする実施でしたが、少し近づきすぎて続く車輪に繋げられませんでした。
その後は立て直し素晴らしい実施を続けて着地を止めましたが、内村航平選手は納得の出来ない表情を見せました。 
アドラー1回ひねりはE難度の両逆手も実施できますが今回は片逆手で実施し、ヤマワキと連続させてDスコアを6.6とした構成で行くことが明らかになりました。

■2020 Friendship and Solidarity competition~友情と絆の競技会~

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:8.600
得点:15.200
「ブレットシュナイダー(H)」を実施する場合は「懸垂振り出し倒立(A)」、「後ろ振り上がり倒立(A)」、「前方車輪1/2ひねり倒立(A)」と車輪を1回多く回すことが確定しました。
「ブレットシュナイダー(H)」はバーに近づいて確実にキャッチする実施でだいぶ近づいているように見えましたが今大会では次の車輪へ繋げました。
その後も大きく迫力のある「カッシーナ(G)」、「コールマン(E)」と素晴らしい実施を続けました。
着地は両足で僅かに動いてしまいましたが会場は大きな拍手で沸き、内村航平選手は会心のガッツポーズを見せてくれました。
ツイッターなどでは自身も「ブレットシュナイダー(H)」を実施出来るフランスのエドガー・ブレ選手、あん馬のスペシャリストのリース・マックレナガン選手(北アイルランド)たちが「キングが帰ってきた」とツイートし、多くの体操選手や体操ファンから喜びと称賛の声を聞くことが出来ました。

■2020全日本個人総合兼種目別選手権予選:1位(五輪代表の分岐点)

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:8.933
得点:15.533
過去最高の「ブレットシュナイダー」の実施で良い位置でバーを掴みました。
続く「カッシーナ」、「コールマン」もいつも通りに大きく迫力のある素晴らしい表現での実施、着地は動いてしまいましたが15.533という超高得点を出しました。

私はこの2020全日本個人総合兼種目別選手権の演技が五輪代表への分岐点だったと思っています。。
これまでの内村航平選手の傾向なら予選ではブレットシュナイダーは回避して確実な構成を実施していたと思います。
しかし佐藤寛朗コーチが「ここでやらなければ意味がない」とブレットシュナイダーを実施することを勧め、内村航平選手も「今更言う、でも信じてやるか」となって素晴らしい演技。
以降2021年は予選からブレットシュナイダーを実施するのが当たり前になり、それが高得点へ繋がり、五輪代表を掴み取るに至りました。
もしここでブレットシュナイダーを回避していたら以降の予選でも回避し得点が伸びず、代表へ届かなかったと思います。
佐藤寛朗コーチの判断、とても難しいものだったと思いますが本当に素晴らしく的確な判断だったと思います。

■2020全日本個人総合兼種目別選手権決勝:1位

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:9.100
得点:15.700
6.6の構成で素晴らしい実施を続け、会場中が期待する中で素晴らしい着地、帰ってきた王者の着地を見せて拍手喝采の大盛り上がりとなる最高の演技を見せてくれました。

■2021全日本個人総合選手権予選・種目別トライアル:種目別1位

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:8.566
得点:15.166
ブレットシュナイダーを持つ位置がいいところで安定して実施出来るようになってきたことがさすがの内村航平選手です。
着地は一歩動きましたが絶対に失敗の許されない中でもしっかりとブレットシュナイダーを決めて演技をまとめてくるところも流石の一言です。
2021年のスタートとしては素晴らしい演技だったと思います。

■2021全日本個人総合選手権決勝:種目別鉄棒1位

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:8.866
得点:15.466
ブレットシュナイダー、カッシーナ、コールマンの持つ位置が素晴らしく15.466の高得点をマークしました。
前演技者の前田楓丞選手が「ミヤチ(I):伸身ブレットシュナイダー」を決めるなど素晴らしい演技を見せて15.300を出したあとで、プレッシャーのかかる場面となりましたがこの局面で攻めたブレットシュナイダーの実施をやってくるあたりはさすがの内村航平選手と言うしか言葉がありません。

■2021NHK杯:種目別鉄棒1位

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:8.733
得点:15.333
ブレットシュナイダーは抜群の安定感があり、持つ位置も素晴らしいです。
この6.6の構成は出来て当たり前という印象を受けました。
ブレットシュナイダーのところで屈身コバチを実施していた2014豊田国際から2018年のころのような安定感があり、さすが内村航平選手と言った「いつも通りの素晴らしい演技」でした。

内村航平選手自身の「試合をやっていくしことでしか分からない。培えない。そこが強さの根源だった」という言葉通りに試合勘を取り戻し試合を重ねるごとに実施が良くなってきています。
内村航平選手の全盛期のような安定感を再び見ることが出来て一人のファンとしてとてもうれしく思っています。

■2021全日本種目別選手権予選鉄棒:1位2021全日本種目別選手権・予選鉄棒1位
技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6〜ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:9.166
得点:15.766
ブレットシュナイダー、カッシーナ、コールマンの実施の良さは素晴らしいとしか言えません。
現地で観戦していた印象としては「シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手」と「ヤマワキ」の実施が本来のものではないのかなと感じましたが、2020全日本個人総合兼種目別選手権決勝以来となる着地をピタリと決めて驚異のEスコア9.166をたたき出し15.766の超高得点をマークしました。
この15.766は2017~2021のルールでは2017全日本種目別選手権決勝鉄棒で出した15.750を上回り、内村航平選手自身最高点を記録しました。

演技全体から内村航平選手の鬼気迫る凄みを感じた圧巻の演技でした。
着地の印象は演技全体のイメージに大きく関わると改めて感じることの出来る素晴らしい演技でした。

■2021全日本種目別選手権決勝鉄棒:2位

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1ブレットシュナイダー:コバチ2回ひねり
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり懸垂
H
2カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
3コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
4シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手
後方開脚浮腰回転倒立とび1回半ひねり片大逆手
D
5アドラー1回ひねり片逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり片逆手倒立
D
6ヤマワキ(伸身コスミック):後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂D
7エンドー:前方開脚浮腰回転倒立B
8アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.6(H1 G1 E2 D4 C1 B1)
Eスコア:8.500
得点:15.100
ブレットシュナイダー、カッシーナ、コールマンの実施のはいつも通り素晴らしいです。

しかし「アドラー1回ひねり片逆手倒立」で倒立が戻ってしまい0.5の減点、「アドラー1/2ひねり倒立」では倒立が反れるなど珍しいミスが出ましたが、着地はピタリと止めました。

米倉英信選手と170ポイントで並びましたがタイブレークの末に内村航平選手が2021東京五輪代表の切符を手に入れました。

内村航平選手は勝敗の要素は「運以外ない」とおっしゃっていましたが、私は明暗を分けたのはミスが出ても着地を止めてたからこそだと思っています。
内村航平選手の代名詞である着地で掴み取った五輪代表であって、これまでの体操に向き合う真摯な姿勢と弛まぬ練習の積み重ねが引き寄せた結果であり、決して運ではないと思います。

東京開催で日本のスーパースター内村航平選手が五輪代表になれたことをファンの一人として心の底からうれしく思います。

東京五輪では結果よりも内村航平選手と佐藤寛朗コーチが納得出来る演技を披露して、最高に輝く内村航平選手の体操を見せていただきたいです。